9 飯食ね嫁

 むかしに、けちん坊のけちん坊の、何ともならねぇだけの人、おったわけです。
 それで、年頃になってから、嫁もらう年になったども、何として、飯食ね嫁欲しいていうわけだ。困ってしまったわけです。 
 ところが、ある人が、飯食ね嫁いだていう話で、ええ娘さんだていうから、行って仲立ちして、嫁もらったわけです。
 なんと見たところが、丈夫だええ嫁さんだ。何しても畑仕事でも、田んぼの仕事でも、何でもしても、飯食ねわけです。
「なんと、ふしぎなもんだ。飯食ねで、なんとして過しているんだ」
 て。そしてある日に、夫が用達しに行ったわけです。一日がかりで家さ来ね。
 ところが、ある人が用事があって行ったわけです。
「こんにちは、こんにちは」
 て。しんばり棒、内から掛って、開けられねぇわけです。
「誰もいねぇて、おかしいでねぇか。嫁もらて、嫁いるはずだでなぁ、おかしいでねぇか」
 誰もいねぇどさ入るわけにもいがねがら、
「んだて、いねぇて、さっきまでいであったでなぁ、何とか、寝ででもいたべか」
 どて、窓コから見たそうだずな。そしたところが、何とおそろしい光景見たわけです。飯櫃そこさ置いてあるべし、髪はものすごくかみかぶって、頭の中さ飯をどんどん、どんどん投げでだわけです。飯櫃からっぽになってから、こんど頭の口、くぐってまた元通り髪結って、ちゃんとしている。んでまぁ、とてもこの人も恐かなくなってはぁ、
「ありゃ、化けもんだ」
 そういうわけで、その嫁を段々問いつめたら、その嫁がそこで居られねぐなって、どっかへ行ってしまったていう話だ。
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