6 糠袋と米袋

 糠袋をのこして、その母親が難産で死んでしまったわけです。そしてあとからもらった後妻の女の子は、米袋と名付けたわけです。ほしてだんだん娘ざかりになってきたところが、糠袋の方はかわいい乙女になってきたもんだ。米袋の方はあまりかわいぐないわけです。
 ところが、後妻なもんだから、何とかして糠袋より自分の持った子ども、すぐれていいどさ、嫁に出したいと思っていたわけです。それで、何にしてもはぁ、食べものにしても、赤い新しい衣裳にしても、まず米袋に呉れてやる。糠袋さはボロボロていうの着せではぁ、食べものだて、あまりええもの食べらせねではぁ、うまいものあらば、かくして米袋さ食せでだべし…。
 ところが、だんだん大きくなって、娘盛りになって、八方から嫁の話も出てくるわけです。米袋さだば、仲々嫁もらうて来ねで、糠袋だけに集まるわけです。糠袋見せて呉ろて来れば、米袋見せたわけです。うんと化粧して、それでも二度と見れば止めて行くわけです。
 それで、ある立派などこから来たわけですな。それで母もこんど二人を見せたわけです。〈いずれ劣らぬ梅桜〉ていう、どっちも歌うたいをやったわけです。
「どっちの娘でもええから、竹に雀止っているのを、そのまま切って、そして、体さそのまま刺した娘をもらって行く」
 こういう問題出したわけです。これぁ、むずかしい問題だわけです。ところが二人がやって見たども、何と糠袋はちゃんと、そのまんま雀を逃がさねで、切って、鉢さちゃんと植えたわけです。ところが米袋は何としたたて、出来ないわけです。それで、糠袋はまずある公家さまの家さ嫁さまに行くことになったわけです。女のりものではぁ、十二単衣の小袖に包まれて、嫁に行ったわけです。糠袋が。
 母が憎くて仕様ないわけ。
「こじぇげだもの、汚らわしい」
 そしたところが、米袋が小川のどぶの中さはねだもんだ。
「米袋、お前、なにして、そんなことすんのだ」
 ていうたけぁ、何と、あと上がって来ねわけですはぁ。そうしたところが、ぶるぶると体ふるわして、その大きな殿さま蛙なて上って来たわけです。
 んだから、継子だなて、片いじめするもんでねぇていう意味だすべな。とっぴんぱらりのぷう。
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