37 井上名右衛門の先祖

 井上家の遠い祖先は、三原家といって、村上の藩士で、御用砥師であった。おそらく江戸の初期で、殿さまから伝家の宝刀をあずかって、砥げと言われて…。
 ところが、あずかって砥がんなねと思っているうちに、盗まっでしまって、刀なくなってしまった。そうすっど殿さまの宝刀盗まっじゃなていうど、昔のことだから、切腹しんなねわけだ。腹切んなねがら逃げるしかないと逃げたわけよ。
 村上藩の手の及ばないところということで、上杉藩のこっちの方に来て、落合の奥の毛下野というところに逃げたそうで、今も「名右(なえ)衛(む)門屋敷」という土地ある。石碑も残っているという。ワカ殿さ行って先祖を出すと、「毛下野の名右衛門屋敷のお墓の土、たまに踏んでけろ」と言うそうだ。
井上武夫
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