11 牛方と山姥

 魚(いさば)売りが鬼婆から、魚みな取らっで、逃げてきて、灯(あか)しついっだどこさ行って、屋根裏さ隠っでいたど。
 そのうち、鬼婆帰ってきて、甘酒温めたら、葭(よし)を引抜いて、鬼婆、ねぶかけしたとき、そいつでみな飲んでしまったんだど。
「ありゃ、火の神さまみな飲んだ。ほんでは餅でもあぶっか」
 て、餅あぶりして、魚食ってきたもんだから、腹くっちくて、眠ぶかけしたど。その餅、葭の棒、屋根から引抜いて、ぺろっと吊し上げて、魚屋、食ってしまったど。目さました鬼婆は、
「ありゃ、火の神さま、上がやったべ。んじゃ眠るべ。木の唐戸さ入ったらええが、金の唐戸さ入ったらええんだか」
 どがて、「今夜、寒(かん)ずるから、木の唐戸さ入って眠たらええがんべ」て、木の唐戸さ入って眠たど。したら木の唐戸さ魚屋が孔あけたど。キリキリ、キリキリて。
「今夜、寒じるもんだから、キリキリ虫鳴くもんだ」
 ていうど。そして鍋さお湯わかして孔から入っでやって、鬼ば殺したけど。
岡田さん
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