23 大歳の火

 年とりの晩、その、あすの朝まで神さまの火消さねように、囲炉裡の火消さないようにということを、姑さんから言われて、嫁さんが火の番しながら、そうしておいっだげんども、ちょっと油断、とろとろと睡魔におそわっでいるうちに、火が消えてしまった。
] 「こりゃ大変なごんだ。何とかそこから火もらわなくてはなんね」
]  と、こういう風に思って、外を誰かちょうちん点けて歩かねべかなと思って、外の上下(うえした)見っだれば、ノッソリ、ノッソリと赤牛(べこ)がやって来た。そして何やらドサーッと置いて行った。
 で、次の日、「こういうわけで…」ということで、かかはんさ詫びたわけだ。ところが、
「火もらうべと思って表さ出はったれば、赤牛(べこ)が来たけ、そして何だかここらさ置いて行ったから、かかはん開けて見てけらっしゃい」
 ほして開けてみたれば、どっさり、はいつさ金入っていたけど。んだから、年とりの晩ざぁ、決して早く寝ねで、赤牛をおさえらんなねということ、歳徳神さまさ有り金全部上げて、赤牛待つということで、夜ふかししたもんだ。
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