13 猫の恩返し

 むかしとんとんあったけずま。
 あるところの古寺で貧乏寺で、その和尚さんがうんと猫かわいがっていだんだけど。したればあるとき、二階からトントントンと降りてきた猫が、
「和尚さま、和尚さま、今までいろいろお世話になって恩返しすっだいからて…」
 て言うて、こういうこと言ったんだど。
「何月何日に、どこそこの庄屋さんの娘逝くなっから、その娘がお寺さまさ行ってお経あげてるとき、何ものかに宙天高くさ棺箱吊しあげられっから、その時何(なん)たお経読んでも、はいつが下がらねげんども、ナムカラタンノー、トラヤーヤ、ブツヤトラヤーて言うど、はいつスルスルと、おれ下げっさげ、んだど和尚さまが楽に暮されっから」
 て言うたか言(や)ねが、スウと猫どこともなく消えてしまったんだど。ほしたれば何月何日、その庄屋さんの娘がぽっくり逝くなって、そしてみんなに送らっで、お寺さまの前さ来て、そしていろいろなお寺さま、何人ものお寺さんに囲まっでお経詠み始まったんだど。ほうしたれば、一天にわかにかきくもって、天から何だかすばらしい手のようなもの、ニューッと出てきたと思ったら、棺箱むんずとつかんだと思ったら、それをスルスル、スルスルスルと天さ引張り上げらっだんだど。
 他の和尚さんだ、「ムニャカニャ、ムニャカニャ」。いろいろなお経詠んだげんど、なんぼお経よんでも、はいつぁ下がって来ねで、だんだん上さ行って…。その貧乏寺一人だけ混ぜねんだけど。ところが、
「なぜしたらええがんべ」
 て、サンオキさ行ってみたれば、
「お前だ、ほだなごんでは駄目だ。一番修行の積んだお寺さまは、あそこの古寺のお寺さまだから、あの人へお経上げてもらわっしゃい」
 ていう易が出たんだど。ほしてそこさかけ込んで行って、
「どうかお願いします」
 て言うたれば、待ちかねたようにしていたその和尚さんが行って空をにらんで合掌して珠数動かしながら、
「ナムカラタンノー、トラヤーヤ、ブツヤートラヤー」
 て言うたら、スルスルスル、スルスルスルて落ちて来た。お経よみ終えると同時に、ずうっと地上さ降ちた。
「やぁ、ありがたいお経詠みなもんだ。やっぱり修行積んでる和尚さま違う」
 て言うわけで、お金どっさりもらって家さ帰って来たんだど。ほして、
「あぁ、あの猫のおかけだ。ほだら町さ行って、うんと魚買ってきて食せんなね」
 て言うわけで、魚買って来たれば二階からトントントンと猫降っで来たんだけど。
「やぁ、猫、おれぁ、まずお前のおかげで、こだえ銭もらった。一生安泰して暮されるっだぁ。お前の好きな魚、タックリだ。なんだっていっぱい買って来たから、上がれやれ、まず」
 て言うたれば、
「和尚さま、和尚さま、おれは尊い、ありがたいお経いっぱい上げらっではぁ、身も骨もバラバラになってしまったんだはぁ」
 て言うたか言(や)ねか、スウーッと煙のごとく消えて猫いねぐなったんだけど。ほしてその虎猫が和尚さんさ恩返ししたんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>佐藤家の昔話 目次へ