11 文福茶釜

 むかしとんとんあったけど。
 あるどこさ、づんつぁとばんちゃいだけど。ほして、づんつぁ山さ行ったれば、餓鬼べらいっぱいして、狐こは結(ゆ)つばいていじめっだけど。
「こん畜生!」
 なて。したれば、じんつぁ、むつこいと思って、
「何だ、お前だ、ほだな、小(ち)っちゃこい狐こいじめるもんでない。おれさこの狐こ売って呉ろはぁ」
 て、狐こ買って、ほして、狐さ、
「お前こんどからいじめられるようなどこさ来んな。ええか、殺されっぞ、こだいしていっど…」v  て、山さ放してやったんだど。ほうしたればじんつぁの家さ狐こ来て、
「昼間んどき助けてもらってありがとうございました。何か恩返しすっだいげんども、なぜしたらええがんべっす」
 て来たけど。して、じんつぁ、v 「恩返しなんて何もいらね」
 なて言うたんだど。ほんでも狐こぁじさまの家見たらば、障子は破っでる。屋根は漏ってる、あっちこっち破っででひどいもんだけど。
「あぁ、じんつぁ、貧乏して困ってるんだな。なぜかして、じさまさ金もうけしてやんなねなぁ」v  て思ったんだど。ほして二・三回ピョンピョンてひっくらかえって跳(は)ね上がってひっくら返って、きれいな金の茶釜に化けたんだど。ほしてちゃんとじさまの屋敷さ座っていたんだけど。ほうすっど、次の朝げになって、じんつぁ、茶釜見つけてたまげだんだど。
「ばんちゃ、ばんちゃ。まずまず大変なことできた。誰ぁ持って来たんだか、座敷さ金の茶釜あっずだ。こりゃまず」
 て言うたんだど。
「早く起きろ、まず。不思議なこともあるもんだ」
 じんつぁ、ほういう風に大声出して叫んだんだど。したらば、ばんちゃ、
「何馬鹿なこと言うず、金の茶釜なの、おらえの家さあるはずあんまぇちゃ。頭さでも来たであんまぇが」
 て言うんだど。
「いや、ばんちゃ、本当だ。金の茶釜、ちゃんとあるんだ」
 はいつ見つけで、ばんちゃもすこだま(たくさん)魂消たど。ほうしてほれ、二人で、「なじょすんべなぁ」て相談したんだど。
「こりゃ、大した茶釜だ。お寺さでも納めんべなぁ」
 て言うて、お寺さまさ持って行ったずも。ほうしたれば、お寺の和尚さま、
「こだえ立派な茶釜見たことない。んじゃ、つうど(少し)だげんど…」
 て言うど、銭いっぱい呉てよこしたんだど。ほうすっどお寺の小僧っこ、和尚さまから言わっで一生懸命金の茶釜みがき始めだんだど。狐こぁ腹やら尻やらごすごすこすられるもんだから、こちょびたくて(むずがゆい)仕様ないんだど。て、
「小僧こ、小僧こ、ここちょうすな、ここいじぐんな」
 て言うたんだど。
「そっと砥げ」
 て。そうしたれば小僧こぁぶったまげて、
「和尚さま、和尚さま、この茶釜、化物みたいだ。こちょびたいだの、痛いだの、そっと砥げだのて喋べたぜぁ」
 て言うたんだど。そして茶釜ぶなげて和尚さんどこさ走って行ったど。
「和尚さま、和尚さま、たまげた」
 てだど。
「馬鹿野郎、どこの世界に茶釜、口立つどこある。よっく見ろ。金の茶釜だはげ、磨くどキッキッて音すんなだべ」
 て言うたんだど。
「ほんねぇず、本当に口立った。ズホだと思ったら、和尚さま来てみろ」
 て磨くじど、やっぱり、
「和尚さま、和尚さま、こちょびたい、痛い痛い。そっと磨げ」
 て言うずも、ほれ。和尚さまも、
「不思議だな。ほんだら、火さ掛けてみんべな」
 て、どんどん火起こして茶釜かけてみたらば、狐こ、あつくてあつくてピョンと跳ねで、障子の孔から外さ逃げてしまったんだどはぁ。ほして、じんつぁとばんちゃさ、銭ドサッと置いてお礼して行ったんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
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