3 狐の嫁入り

 むかしむかし、楢下の宿に利兵衛という庄屋さまがいだんだけど。で、ある日町さ用達しに行ったけ、用達して買物などして帰り道、三本松の三辻まで来たれば、小狐がピョコンと出はって来て、おじぎしたんだど。あんまりめんごいので、庄屋さま、
「よし、可愛い奴だ」
 と言って買って来た油揚げを御馳走してやったんだど。小狐はそれから庄屋さまが大好きになってしまったんだけどはぁ。
「いつか、恩返しすっだいなぁ」
 て考えていたれば、ある日の夕方、庄屋さまがまた上山から買物に行って戻るところだったけど。ほこで、狐はきれいな娘さんに化けて、
「庄屋さん、利兵衛さま、先日は御馳走さまでございました。今日は庄屋さまさ御馳走したいから、おら家さいじゃて(行って)呉(け)らっしゃい」
 そしてその狐の娘こが家さつれて行ったずま。ほうしたれば、そこはすばらしい立派なお屋敷だけずま。ほして庄屋の好きなものばり山ほど御馳走してから、娘は庄屋さまに、
「あなたのような心のやさしい人、ぜひ養子になっていただきたい。お聟さんになってけらっしゃい」
 て願わっだんだど。
 もはや頭には白いものが少し出はじめた庄屋さんであるが、小娘の、その庄屋好みの丸ぽちゃな、そのめんごい顔で願わっだもんだからたまったもんでない。二つ返事で、
「ああ、そうしよう、そうしよう」
 て言うて、その邸宅で娘と二人で暮すことになったんだど。ほうしているうちに玉のような赤ん坊まで生まっでしまったんだどはぁ。
 庄屋さまが、ある日、ふと家のことを思い出したんだど。
「いや、これは大変だ。頼まっだ部落の仕事、あんまりええ娘と暮しているうちにすっかり忘っでしまった。まずこりゃ用達して片付けて、それからまたゆっくりお聟さんならんなね」
 と思って、
「これこれ、ちょっと、わたし用事思い出して、家に行って用事を片付けてくるから」
 て、その娘さ言うたんだど。そうしたればその娘は、
「ああ、そうがっす、そうがっす、んだらば」
 て言うわけで、いっぱい土産たがかせて、そして帰してよこしたんだど。庄屋さまも少し家の人やら奥さんやらに具合悪(わ)れもんだから夕方へなってから、ソロリソロリと家さ近づいてみたんだど。ほうしたれば家の中では大勢の村の人の声が聞えるんだど。て、
「こだいいっぱい村の人が集まったべ」
 て思って、格好悪(わ)れから裏口からソロッと入って行ってみたんだど。すると村中の人たちが集まって心配してた矢先なもんだから、庄屋さまば見付けて、みんなびっくりして庄屋さまを迎えだんだど。ほして、
「どこさ行ってだどこだっす」
 て聞かっだんだど。
「いや、わしぁなぁ、町の帰りに、ほれ、親切にしてた娘にお聟さんになって呉ろ、お聟さんになって呉ろて言わっで三年にもなる。ちょっと頼まっだ用件を思い出してなぁ、家さ帰ってみたどこだ。んだげんども子どもも居るごんだし、わしはすぐ戻らねくては…」
 そこで、奥さんに、
「あなた何言うていっどご。お前、たった三日しか家を空けていねなだぜ。三日間も家空けたもんだから、村中の人さ迷惑かけて、そっちこっち上山の旅篭屋から、山から何から、消防団などみな出て探して、ほしてみんなして集まって探してた矢先だぜ」
 て言わっで、始めて庄屋さんが、
「はぁ、ほんで、おれ三年間もいて、子どもいたなて思っていたな、狐に化かさっでいたなだな」
 ていうことが分ったんだど。そして始めて自分が狐に化かえさっでだな分ったていうことで、ドンピンカラリン、スッカラリン。
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