8 ネズミの嫁

 むかしあったけど。
 あるところに、夫婦のネズミいであったど。そしてこんど、なんぼかめんごい女ネズミ生れたずも。そして、
「これはええ娘だから、なんとかして、世界でも偉い者のどこさ呉っでやりたいものだ」
 て、あっちこっち聞いて、そしてその挙句、
「いやいや、おれ、ええことみつけた、一番えらいのは、世界中でお日さまだと思う。まず、世界中照らすのは、お日さまより偉い者はいないべから、そさ、おれ、まず頼んでみて来っからな」
 て、男ネズミ出かけたず。そして行って、
「お日さま、お日さま、おれ、ええ娘持ってだから、嫁にもらってもらいたいもんだ」
 て。そのうちに雲出てきたずもな。
「おれ、もらいたいことは精一杯だども、おれより偉い者いだ。おれ、なんぼ世界中照らす気になっても、こういう風に黒雲に出られっど、思う通りに、とても照らすことでないから、雲に願った方ええ」
 て、そういうたけど。そしてこんど、雲に頼んだら、
「おれより偉いものいた。おれ、なんぼ厚く曇り空にすんべと思っても、風吹いて来られっど、とても一帯の曇り空に出来ないから、風に頼んでみろ」
 て言うたど。そして風の神さ行って、こんど、
「風の神、どうかおれの娘、あまりええ娘で、偉い人さ呉れっだいと思っていたがら、風にもらってもらいだいもんだ。息子持ってたら、おらえのな、もらって呉(く)ろ」
 て言うたど。
「おれも、もらいたいども、おれより偉い者いた。おれより偉いのは土手だ。なんぼ平らに強く吹いて行くべと思っても、高い土手あっど、とても平らに吹き渡っこと出来ないから、土手さ行って頼んでみろ」
 て言うたけど。そして土手さ行ったらば、
「おれより、偉いものいた。なんぼええ土手築いても、ネズミにかかっては、とても降参だ。あっちこっち穴掘って崩されっど、土手の形なくなっから、やっぱりネズミの娘は、ネズミの息子に呉(く)っだ方が一番ええから、そうした方がええ」
 て、そう言わっだど。むかしとーびん。
 
〈話者 高橋しのぶ〉
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