18 姥     捨

 年とった者捨てろと命令がきたもんだから、山さ年寄りを背負って行くとき、ずうっと考えて、考えて、
「何とかして、この母親は山さ投げたくない」
 て行って、そして、
「この辺さ置いて行くとええんだな」
 と見たらば、その母親は、
「お前、道に迷うと悪れと思って、ずうっと背負(おば)ってくるうちに、木の枝を折(お)しょってきたから、そいつ目当てにずうっと降っで行げ」
 そして行ったど。ほして考えてみたらば、
「何たて、おれ、罪人になったて、母は山さ投げて殺していらんね」
 て思ったもんだから、夜のうちに行って、そっから母のとこ、世間の人に見えねうちに連(せ)てきて、隠しったところが、
「灰で縄をなって出せ」
 ていう命令が殿さまから出たど。はいつを、その母から聞いて出したど。
「縄をなったな、そくっと上げて焼いて、そのまま持って行くど、灰の縄なんだから」
 て、持って行ったど。殿さまは、
「ほいつはお前の智恵でなかんべ、お前の考えでなかんべ」
 て、示さっじゃところが、
「実はこういうわけだ」
 て、話したところが、それから年寄りだって投げたりするもんでないていうことになって、投げねことになった。
(関場)
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