4 蛇退治

 むかしあったけど。
 殿さまに、
「お前、あそこの山に大蛇いたから、退治してこい」
「殿さま、大蛇など、おれ、とっても退治さんない」
「んだげんど、お前でないくて退治さんねから、村人困っから、お前でないと退治さんねから行ってこい」
「ほうか、ほんじゃ、何とも仕様ない。大蛇に食れんべげんど、おれ行かんなねごで」
 て思って出かけた。それで山の中腹さ行って、ここら辺で一服すんべと思って、一服してだば、縦縞の着物きた若い男が傍さ寄ってきて、
「旅のお客さん、何用あってござった」
「おれはここに住んでいる大蛇退治してこいて、殿さまに言わっじゃから来たどころだ。どこらに大蛇て、いんべ」
「この山にいた」
 と、その若者ぁいう。
「なじょしたら退治されんべ」
「おれの考えでは、煙草のヤニをいっぱい樽さ作って、そいつを掛っど、大蛇が死ぬそうだから、そいつを掛けろていうので、煙草いっぱい吸ってだどこだ」
 そして背負ってた樽さ、ぽんぽんとはたいていたど。そしたば、
「お前、嫌いなものは何だ」
 いろいろな話してるうちに、
「おれは煙草のヤニは大嫌いよ、ほんじゃお前、何嫌いよ」
「いや、おれ、世の中で一番きらいなものは、金だ」
「そうか」
 ていうて、そのまま別っで、そして煙草いっぱい吸って、樽さヤニでっつりこさえで、山の天辺(てんぺん)さ登って行って待ってだば、大蛇出てきた。そして大蛇さかけて、
「ああ、ええがった、ええがった。大蛇さ掛けたし、こんでは死ぬべ」
 と思って、家さきて、その夜寝た。そうしたば夜中ごろ、ジャランジャラン、ガランガランと、ものすごい音立ててきたど。何だと思ったば、自分が寝っだ枕元さ、山ほどの金集まってだど。
「あれ、今日、若者と話したって、一番嫌いなもの何だっけ、おれ、金が嫌いだていうったけ。その通り、何なごんだべ。こいつ、こがえなこと起きたこと」
 て、考えてみたけぁ、そいつが蛇に化けていたなで、おれにヤニ掛けらっだから、こんどおらえの嫌いなもの掛けだんだなと、その男は大金持になったけど。んだから蛇退治に行くときは、ヤニ持(たが)って煙草持って行んこんだ。
(関場)
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