1 猿と蛙の寄合餅

 むかしあったけど。
 ちょうど脇の家で、餅搗いてペッタンコ、ペッタンコと餅搗いていたどこ、猿と蛙ぁ、
「みんな食ってるうち、あの餅背負ってって、山さもって行って分けて食うべ」
 て、二匹できて、
「なじょして持って行ぐ」
 て。そうしたらば、その蛙は、
「おれ、池さとび込んで、おぼこの泣き声を立てたとき、みんなワッと餅搗いっだどこ、たまげて出てきた時、お猿さん、背負って山さ、そして盗め」
 と、こういう相談になって、そしてそのオフギァ、オフギァて泣いた。そうすっど、
「なんだ、おぼこぁ、池さ入った、んねが」
 なて、みんな騒いで池さ廻っているうちに、その裏の戸の口さ、臼そのまま置いて、みな池の方さ行ぐべから、ほんどき、猿、臼がらみ背負って、猿ぁあらがったもんだなぁ、なて丁度裏山さ行って、蛙も弱いもんだから、
「あまり山さ行かねで、この辺で分けねがぁ、お猿さん」
 ていうたれば、
「駄目だ、この山の上さあがって、そして行ぐど、何も心配ないから、山さあがって分けろ」
 こういうわけで、背負って登った。あとから蛙はピッタンピッタンと上がって、ようやく山さついた頃、
「やれ、こんど分けてもらわれる」
 と思って安心したところぁ、こんどは、
「こっから、まぐってやって、下さ行って一番先に臼に追(お)っかついた人は、全部もらうこと、こうして決めないか」
 というた。
「そんなこと、おれは弱くて駄目だから、ここで分けて呉(く)ろ」
 て、再三頼んだげんど、猿が、
「山さ登ったのは、おれ、こういう計画で登ってきたなだから、駄目だ」
 て、話しているうちに、まぐったていう。ドンドン、コロゴロまぐった。そうすっど、お猿さんは後になり先になりして、臼のそば走って来(く)っけんども、蛙はとてもそう来ないもんだから、
「さてさて、困ったことしたもんだ。おれは餅食(か)んねなぁ」
 と来たところぁ、立木の脇さドシーッと餅は落ちてよ、そうしていたところぁ、その臼から、みな剥(はが)っだように大きく落ちてる。
「いや、これはよかった」
 と思って、竹の葉さなど包んだのを風呂敷さ包んで降ちてきたど。
 そしていたところぁ、お猿さんは後から上ってきた。そして、
「下までいったところぁ、臼ばんで、餅なかったから、餅見つけてきたか」
 ていうたら、
「おれ、こういうわけで、後から来たれば、落ちっだから、風呂敷さ包んで背負ってきた」
 お猿さんは、
「そいつ、よこせ」
と、喧嘩になったところぁ、
「お前はそんなもの食(く)だいなら、みなやる」
 なて、そして蛙は、そいつから出して、猿の顔面(つら)さ、びだーっとぶっつけたど。そうしたところぁ、あついあついて、そうしたときに火傷したので、猿の顔面ざぁ、赤かったもんだど。
 どんびんどろすけさるまなぐ、さるのまなぐに毛が生えて、けっけっ毛抜きで抜いたれば、まんまん真赤な血ができた。
(関場)
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