13 毛脛(ずね)の化けもの

 大荒沢の新兵衛の家ざぁ、ふしぎなことのある家だったど。
 ちょうど、お年取りの夜、そこの家さ恵比須棚ていうのある。夜、そこから棺桶がずうっと下がってきたていう家だな。一晩、雨の降る夜、雨落ち(ダケンいう)に雨の音きこえる。その夜、外からきて、
「新兵衛、新兵衛」
 て、呼ばる人がいる。
「はて、何だべな、いまごろ、この雨降りに」
 二軒しかないところだったから、そこの家の雨戸がらっと開けて、「誰だ」て、開けてみたら、何にもなくて、そこにこんな太い毛だらけの脛が二本見えただけだったって。
(藁科)
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