5 八谷金山の伝説

 八谷金山は、昔掘ったところを調査して見ますに、よほど昔掘った物と思われます。火薬のない時代でしたから、昔、何百年も掘り続いたものでしょう。伝説に残っておりますことは、ある時、あまりの名山にて、なお一層よくなってもらいたいと、金神としてライ病の人を集め、金山の川上に大切にして養なっておったそうです。今でも、「ドウス沢」として残っております。
 金山も益々よく出来るものですから、「大(おお)直(なお)り」の祝いをすることになったそうです。金の銚子や金の盃などを沢山造り、オイランの弥一郎、三(さん)替(かい)、宮内(くない)の三人を上げ、大直りの祝を鉱内にてやりますと、ある一人が鉱内から出てきましたら、沢の向いできれいな女が手を招いているので、鉱内に行き、みなに様子を教えたが、みながそんなことがないと本気にせず、その男が、あんまりきれいな女なので、今一目と、出てきたが、後ほど見ると、どこにも見えなかった。鉱内に入ってみると、鉱内がつぶれ、全員が死んでしまったという話です。
 今でも、弥一郎沢、三替沢、宮内沢が残っています。神原にも八谷金山の、その折のオイランの伝説が残っているところがあるそうです。
(内藤三郎)
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