11 ネズミに化けて生糸を盗む

 伊佐には子分が七人もいた。あるときこんなことがあった。子分たちに、
「あの家の生糸を盗って来い」
 と命令した。子分たちは、
「そう言わっでも、どこさ生糸があんのかわかんねぇだス」
 と言うと、伊佐は、
「何をばかども、あり場所は家の者 (もん) に聞け」
 といって横を向いた。
「家の者にどうして聞くだス」
 と聞くと、今度こそ親分もほんとうに怒って口をきかなかった。何日かたって から、親分の機嫌もいくらか直ったらしく、子分たちに向って、
「今晩、おれと一緒について来い」
 といった。その晩、二人の子分をつれ、シノ竹を一尺くらいの長さに二本切り、 鋸をたんがって、生糸のある家の縁の下にもぐった。親分はどうするのかと見て いると、その鋸で竹を切りはじめた。その家のジサマとバサマの二人暮しで生糸 を商っていた。下の方でキイキイという音がするので、バサマは心配そうに、 「あれあれ、ネズミが入った。あの糸は大丈夫がや」
 というと、ジサマは笑って、
「なに、心配すっこどねぇョ、上段のタンスの二番目にちゃんと入ってっから」
 と答えた。もうこうなると、盗んだも同然だった。
(「東北快盗伝・長手の伊佐」)
>>佐兵ばなし 目次へ