23 菓子の只食い

 ある日、行ったら、砂糖樽いじり廻しったの見て、佐兵は砂糖大好きなもんだ から、見っだんだど。
「なんだ、佐兵。いつまで見ていっこんだことなぁ」
「おれぁ、砂糖大好きなもんだからよ」
「百匁ぐらい買って食ったらええがんべ」
「んだげんど、おれぁ百匁、二百匁で足んねもんだもなぁ」
「ほんじゃ、なんぼ食れっこんだ」
「食う気になっど、一樽も食れんなぁ」
「ほんじゃ、一樽食うごんだら、食ってみろ、呉れっから…。こいつ一樽食うご んだら呉れる」
 て。
「ほんじゃ、食ってええか」
「ええ」
 て。みんな街道通りも、家の人も、佐兵ぁ一樽砂糖なめっどこずから、みんな 来てみろ。まずと家内中寄ってみたど。ほしたらば、まずうまそうに食って、
「今日は、こんでたくさんだはぁ」
て行ぐどこだど。そうすっどその旦那、
「ちょぇっと、待てまず、一樽食うどこの約束だ。樽食んねもの、首置いで行か んなねごで」
 首置く約束だったど。
「おれ、今一ぺんに食うと言わねどら、一樽食れると言うたげんども、そがえに 一ぺんに食うと言わねどら、んだから、明日も来て御馳走になるし、明後日も来 て、御馳走になんのだ、さいなら」
 て行くどこだど。そうすっど、
「ちょぇっと待てまず、おれも佐兵には参ったんだ、あやまった」
 て、佐兵にあやまったど。
〈話者 近きよ〉
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