3 ねずみとり

 冬になっど、百姓はみな藁仕事しているど。佐兵は賭好きで、
「いやいや、あそこに四つ足の鳥いだっけ。四つ足の鳥、篭さ入ったけ」
「この野郎、四つ足の鳥なんていないべちゃ、鳥ぁ二本足だべちゃ」
「ほんじゃ、賭すっか、いたぜ、たしかに…」
「あまりええ、賭すんべ、四本足など持っている鳥、世の中にいないから、おら だ勝ったぞ」
「いやいや、お前の負けだ。実際見て来たなだぜ、篭さ入ったな」
「んじゃ、行ってみろ」
 て言うもんで、みな行ってみたというんだな。そしたれば、やっぱり鳥篭さ猫 入ってたけど。
「ほら、見ろ、四つ足の鳥いたどれ」
「鳥であんめぇちゃえ、猫だごで」
「鳥だごで、ねずみとりという鳥だごで…」
 そして、佐兵に賭負けたというのだど。
〈話者 佐藤宇之助〉
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