36 大歳の客

 むがすむがす、年取りの晩に、瞽女さま来て、ある家さ行って、ええ家なもんだから、
「泊めでけらっしゃい」
 ていうたれば、
「おら()では、オナカマなの、泊めね」
 ていうたって。ほんで仕方なくて、貧乏しったよなじんつぁとばんちゃいだどこさ行って、
「こういうわけで、どさ行ってもことわらっで、泊まっどこないから、泊めてもらわんねべか」
 ていうたらば、
「こだな家でええごんだら、泊らっしゃい」
 ていうたって。
「んでは、あの、足洗って来っからって」
 ていうたけぁ、なんぼ待ってでも来ね。
「ああ、瞽女さま、目見えねがら、井戸さ入ったんだ。ほんでは」
 ていうわけで、がらがら行って釣瓶上げてみたんだど。ほうして釣瓶さ、銭ぁごっそり入って来たって。探せども尋ねれども、瞽女さま居ねがったって。
「ああ、神さまだった。こりゃ、神さま助けて()だんだ」
 て喜んでいだって。
 ところが隣のじさまとばさま、はいつ聞いっだけぁ、次の年はぁ、待ち伏せかけで、瞽女さま、いきなりとっつかまえで、
「泊らっしゃい、泊らっしゃい」
「足洗ってござっしゃい」
 て、こんどは井戸端さ行ったけぁ、井戸さつき落としてしまったんだけどはぁ。ほして釣瓶つっぱって上げてみたれば、うらめしい顔して死んだ瞽女さま上がってきて、ほこでは、こんど人殺しだなて、しばらっだったけど。んだから、人さはやさしくしんなねもんだて、昔の人ぁいうたど。どんぴんからりん、すっからりん。
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