27 天神さまの小判

 むかすむかす、ある村に天神さまがあった。その天神さま、みんな「御利益ある。御利益ある」て、お詣りする天神さまだった。
 ところが、ある一人の人が、まず縁日であろうが、一日、十五日、かかさずお詣りする。一人の人ぁ、
「おい、君、縁日だ、今日行がねが」
 ていうど、
「今日は忙しいから、君、たのむぁい」
 また次の(がえり)
「君、んじゃてまず、お詣りばりもしたらええがんべ」
 ていうど、
「おれぁ、まず、やっとやっと暮していらんなね。何とかまず君さ頼むがら、かえづ、持って行って()げてけろ」
 なて、頼んでよごす。ほしてほの人は、天神さまさ言うたど。
「この野郎、うまくない野郎だ。おれさそったって、一ぺんも来たことない。あの野郎さ、何かやるものないもんだか、天神さま」
 ていうたって。したら天神さま、
「そうか、そうか。んだらば、これ、ほこの家の戸あけて投げで行ってけろ」
「うわっ!」
 て、たまげだって、生首だっけど。たまげだげんど、小気味ええわけだどほれ。生首置いでっておどろかすな。
「はいはい、まちがいなく置いでいきます」
 て、戸開けていきなり、生首放り込んで行った。
 ほして、次の日、きゃあきゃあてさわいで、(なん)た騒ぎしったべと思って、こっそりこっそり行って、サマ舐めで孔あけて見たれば、家内中、「アハハ、アハハ、ええがった、ええがった」ている。なんだと思ったれば、生首だと思ったのは、はいつ皆小判だったど。
 ほうして、ヤキモチ焼いで、ほれ、一生懸命お詣りする人ぁ、天神さまさ行った。
「天神さま、天神さま、なんだず。生首なて言ったけぁ、お金()だんだどほりゃ」
「んだ」
「なしてだ。んだら、おれさ、まだまだええもの呉んなねべなぁ。おれなの、こだえ毎日、縁日ていうど、お詣りに来るどれ」
 ていうたって。ほしたら、天神さま、
「ほうか、んだげんどな。おれはお前とちがうぞ。お前は形ばっかりだ。形の上だけきれいで、形の上だけええげんども、あっちの人はそういうもんでない。本当え誠意のある人だ。お堂建てっどきも、ないどっから銭、ほとんど出して()だ。ほして貧乏してっから来らんねな、おれも認めている。当り前だ。ほんでさえも、お前さ届けてよこすな、お前の何層倍のお賽銭でないか。お前、お堂の建て代えの時、何一つした、小便たっで行ったきりでないか。ほんな人とあいつと、天神さまは一緒に出来ないんだ。誠意のある人は誠意のあるようにええことあるんだ。お前も形ばっかりを改めで、本当に誠意をつくして世の中渡れよ」
 どんぴんからりん、すっからりん。
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