24 河童の手

 むがすむがす、杢庵先生て、今でいえば内科の明るい先生がおったって。んだげんども、外科の方はあまり得手前(えてまえ)でなかったらしい。
 ところが、たまたま、ある橋端まで、患者のどこに行って帰ってきたところが、何だか板さ馬の足、吸い着いたみたいになって、ピタリと馬が止ってしまった。何だろうと思って、こう、夜陰に乗じて、こう、下の方見てみたれば、何と小さな怪物が、馬の足さまつわりついっだ。
「ははぁ、これだな。河童ていう奴は」
 て、腰のものを抜いで、えっと切りつけたらば、バラリとそこさ河童の手が落っだわけだ。はいつを拾って、ゆうゆうと帰って来た。ほしたればほれ、馬の足も動くようになって、家さ帰って来たら、トントン、トントンて、夜、戸叩く。何ごとならんと思って、ほれ、いたれば、さっきの河童が涙ながらに、
「手を返して下さい。時間が過ぎればはぁ、手がつかないように、ふつがねようになるんだって。んだから、何とかお願いします。これからいたずら決してしねがら、何とか返して下さい」
 ていうわけで、懇願するわけだ。そうすっど、さすがは杢庵先生、やっぱり内科とは言えども医者なわけだ。
「どうだ。お前。この手持って行って、何するつもりだ」
 ていうたらば、
「薬をつけて、ふっつげっど、ふっつがる」
 ていうた。
「んだらば、この手を返してやっから、その薬の製法教えろ」
 ていうたって。で、河童、手もらいたいもんだから、承諾して、そこで薬の製法を杢庵先生さ教えたど。ほしてこんど、その薬をもって外科やったところが、なんと大概な剣はみな、たちまちにして治ってしまう。いや、すばらしいもんだていうわけで、内科、外科とも有名な医者になったったはぁ。どんぴんからりん、すっからりん。
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