16 塙保喜一

 塙保喜一という盲の大先生いだけど。多くの弟子ども居で、日中働いで、夜手習いするなだけど。
 ある時、いつものとおり、ローソク点けで、おさらいが始まったんだど。あるところまで本読んだれば、一陣の風吹いできて、ローソクの灯がパッと消だんだど。
「先生、先生。ちょっと待ってけらっしゃい。灯りが消だ」
 ていうたれば、大先生、
「さてさて、目明きという者は、誠に不自由なもんだなぁ」
 ていうたけど。
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