2 わらみご長者

 むかすむがす、あるどころに、まま母とそのたくさんの子どもと、先妻の子どもと()だけど。むかしはお産の事故でなぐなることが多がったもんだから、どの村にも、まま母ていうな居るんだけど。
 ところが、その先妻の子どもが若者になって、誰かに、お前は今の母さんの子どもでないぞ、て教えらっだんだど。
 んだげんども、あだえやさしぐしてくれる人、本当の母親だと思っていだんだったど。
 ある年の秋、取り入れもきまったす、冬なの藁仕事ぐらいしたんでは、お汁の泡代ぐらいしかなんねていうわけで、(しょく)べらしのつもりで、出かせぎに出だんだど。ほの時、持って行くものとて、何もなぐ、ワラミゴ一本持って行ったんだど。
 したれば、どこからともなく一匹のアブが飛んできたんだど。はえづば()めでミゴで結えで、ずうっと行ったれば、向うの方がら馬車さのった百姓の子ども来て、
「あのアブ()すい、あのアブ欲すい」
 ていうもんだから、何気なく()でやったんだど。したれば()み瓜三つ呉れだんだど。はえづ持って、その道まだずうっと行ったれば、お姫さまの道中ど行き会ったんだど。したれば、そのお姫さま、
「喉乾いだ、喉乾いだ」
 ていうげんど、その付近に水らすいもの、何にもなくて、付人(つけびと)がほとほと困っていだんだけど。そこで、さっきもらった熟み瓜ば、おしげもなく差し上げだんだど。したれば、今度、木綿の反物三反くれだんだど。
 また、ずうっと行ったれば、馬喰だ、馬三匹引張って来たげんど、一匹が病気になって立ったり転んだりして苦しんでえだけど。しまいには倒れてしまたんだけど。ほごさ行ったれば、
「何か、かけるものなえべが」
 て、可哀そうだから、何か、かけてやっだいなていうてだもんだから、反物やったれば、
「この馬、お前さ呉っから」
 ていうて行ってしまったんだど。したればほの馬、疝痛でガスが腹にたまって苦しんでいだなだけげんど、屁一発たったれば、もっくりど起きで、たちまちええぐなったけど。
 その馬ひっぱって下って行ったれば、大きい村さ着いだけど。ほごの村さ着いだれば、村の人々が馬引っ張った若い者来たあ、なて見っだけぁ、一人の人が、
「実は、君、長者さまで働いでけねが。来年、代かきさんねくて困って居たところだ。馬も居だことだす、何とか頼む」
 ていうわけで、腰おちつけで、働いでみだれば、旦那さまと奥方さま、伊勢まいりに行がんなねていうことで出て行ったきり、何年経っても、帰って来ねがったど。ほこでその身上全部若者のものになって、長者さまになったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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