12 鳴りもの

 ある人が江戸さ行ってきた人に、「鳴りもの」借りた。
「君、この鳴りものは、決して強くひくなよ、強くひくとええ音出っけんども、危険なことあっから決して強くひかねでけろ、貸すから」
 て、その鳴りもの借っで、ほして見たれば、なんたてこの妙なる音で、すばらしい音で、ひけばひくほど段々ええ音が出てくる。強くひけば強くひくほどええ音が出て、強くひくなって()っだんだげんども、だんだえ、だんだえ強くひいで行ってしまった。
 ほうしたけぁ、最後にガチャンて言うたと思ったけぁ、ものすごい大きい蛇が出てきて、体ぐるぐる八巻き半に巻がっだ。ほしてほこさ友だちは、「鳴りもの」とりに来たって。ほうすっど、
「ほりゃ、強くひくなていうに、ひっから、ほういう風になった。んだから人の言うこと聞かんなねもんだ」
 て、()っだったて。どんぴんからりん、すっからりん。
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