3 (びっき)(ぐさ)

 ある人が、田んぼさ田の草とりに行った。そうしたれば、何だかガサガサて、パタラパタラていう音すっど思ってだらば、大きい蛇が殿さま蛙の足片方のんで、ほして腹も半分ぐらい呑んでいだっけはぁ。そしてほの動くたんび、牙立てられるもんだから、ほの蛙が動がんねくて、ほのまんま、だんだえ、だんだえ、がおって行ぐ。これは可哀そうだと思って、その田の草しった人は、〈蛇さヤニが一番毒だ〉て聞いたから、少々叩いだぐらいでは離さねもんだから、キセルからヤニとって舐めらせだらば、いきなり吐き出した。ほして蛇は、どこともなく行ってしまったげんども、ほの蛙は、足半分溶けたみたいになってはぁ、全然動かね。背中さ牙の跡いっぱいついでで、「いやぁ、みにくいごどぁ」ていうわけで、脇から葉っぱ、ちょぇっと取って、葉っぱ当てて、して、クコていう草ではいつ結って呉だ。ほして間もなく引っくりがえっていた蛙が、くらっと起きた。ほしたれば、ぴょこらん、ぴょこらんて跳ねはじまった。ほの草背負ったまんま。
「はて、おかしいこともあるもんだ」
 て思って、ほしてその人が蛙ばそおっと押えて、そのクゴ解いてみたれば、溶けかかった足ぁ、ちゃんと元通りになって、背中の傷もほとんど治っていだっけど。
「いやいや、ごだえ治る草は…」
 て、ほれから、ほの草ば〈びっきぐさ〉て名付けた。〈オオバコ〉のことを、〈蛙草〉という。今でも手足切ったりすっど、蛙草あてて結うど、化膿しないし、痛みもとまるていうのだったど。元々蛙さ結って呉たのが始まりだて、この辺では語っているわけだ。どんぴんからりん、すっからりん。
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