2 おとぎり草

 むかし、仲のええ兄弟いだったげんども、少しのことからいさかいになって、ほして兄もゆずらね、弟もゆずらね、最後には取っ組みあいの喧嘩になってしまったど。
 昔は野原、山さ行くとき、たいがい山(な)刀(た)さげて行ぐもんだから、兄貴ぁ、舎弟に負けていらんねと思って、カッとなって、ほの山刀(なた)で切るつもりはないがったげんど叩いてしまったら、弟の首切ってしまった。ほして鮮血にまみれて、弟は倒っでしまった。
「ありゃりゃ、これは()れごどした」
 て、あたりほとり見てみたれば、草があった。その草いきなりとって、揉んで、ノドさ、はいつ付けて結って()だれば、血はとまって、たちまちほの傷治って、ほして息吹き返して蘇生した。
「こいつぁ、草のせいだ。これは効く草だ」
 ていうわけで、ほして怪我したときなの、ちぇっちぇっとつけて見たれば、大変よく傷口が治る。んで、弟ば切ってつけた草だから、〈オトギリ草〉とすんべというわけで、今でも土用の丑の日に、はいつとって焼酎漬けにしてで、はいつ傷薬に使っているわけだど。
 飲めば胃腸にもええなて、大変重宝がらっで焼酎さつけておく。どんぴんからりん、すっからりん。
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