14 底のない釣るべ

 ある旦那衆が嫁もらったって。ほこさ嫁に行ったれば、ほこの舅親父が、嫁さ底のない釣るべで、
「かいつで、水汲みなさい」
 ていうたって。ほしてタライ、ほこさ置いて、「かいっちゃ汲みなさい」て。
 せっせ、せっせて汲んでみたげんど、一回こう上げてみても、ポタポタ、ポタしか落ちね、底ないんだから、何回汲んでも。んだげんども、ほれ、汲めて()っだもんだから、半日汲んでいだれば、舅さまがほこさ帰ってきて、
「汲んだか。ああよく汲んだ」
 て。
「おまえが釣べの(がわ)(面)であるぞ、うちのせがれが底であるぞ。うちのせがれがなんぼ底抜けであったて、お前がみっちりしていれば、これだけの水が溜めることできるんだ。んだから、ゆめゆめ、粗ろうのないように、お前がしっかりしてくれれば…」
 ていうことを、水汲みでさとしたていう話聞いたことあった。
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