3 金のぼんだら

 むかしむかし、この村に狩人を生業(なりわい)として暮してる若者がいだったど。
 ところが、ここら周辺の山、蔵王の中腹まで、まず、くまなくどこも入ったことない、知しゃね沢ないくらい歩いて、そして、ほれ、カモシカよ、ウサギよ、熊よて、いろいろ獲って、その毛皮なり、肉なりを売って生業にしてだ若者がいだっけど。
 ところがある時、入ったことのない沢さ入ってみたところが、そこに洞窟があった。
「はぁ、こんなどこに洞窟がある」
 と思って、ちょっと中さ入ってみたれば、そこぁ、金のぼんだら(つらら)だった。
「いや、これは大したもんだ。何もこだえしてあくせく獣の尻追っかけていなくとも、これ一本持ってって売るんだら、一生食えるんだ」
 と。ほしてはいつ取って帰ろうと思ったら、白髪の老人がどっかどもなく現わっで来て、
「これこれ、若者。それを決して〈ワタクシ〉してならないぞ。取ってはいけない。もし、これを取るならば、お前の村で困っている者のために取るんだったら許す。んでなかったら駄目だ」
 て言わっだ。神さまのような人に言わっだもんだから、ほれ、とにかくこの人ぁ神さまだ、この人の言うごと聞かねど、死ぬがもしんねというわけで、
「んでは、ちょっと申し上げますけども、うちの村で一番困ってんのは、カヤだ。屋根を葺くカヤがなくて困ってるんだが、ほのカヤを造成するために使って、なんたべ」
 て、伺い立てだんだど。
「それは結構だ」
 て、まず家さ帰ってきて、庄屋さんさいろいろ相談した。
「ほだえ、ええことあっこんだらば、そのぼんだら売って、まず殿さまから土地払い下げでもらって、カヤの造成する」
 こういうわけで相談なって、そしてそこさ行ってみたれば、やっぱり金のぼんだらが下がっておった。それを頂戴して、そして殿さまから土地借りうけて、カヤ野を作った。して、その若者の姓は〈滝沢〉て言うたったっけ。んで今でも、ほこ「滝沢山」て、その人の名前とっていう。大滝沢、裏滝沢、表滝沢、ダイズ、チョウシの口なて、いろいろある。またそこに百貫森ていう山もあった。一日五十貫匁の鉱石掘ったどこは「五十貫山」、百貫匁の鉱石出たどこを百貫森山ていうたっけて。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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