53 大阪の蛙(びっき)と京都の蛙(びっき)

 大阪にも京都にも、蛙いでだど。そして大阪の蛙は、
「何とかして、おれも京都、一ぺん見たいもんだ」
 て思って出かけて行ったど。
 ピタンピタンと出かけて、峠まで行ったど。
「いや、疲れた疲れた。腰病(や)めっから、一つ立って…」
 て思って、立ったど。蛙の目は天頂(てっちょ) にあるもんだから、立ったもんで、後ろ見えたど。そうしたら、大抵京都見えるかと思ったのに、立った拍手に、後ろ見え たもんだから、大阪見えたど。
「なんだ、京都なんて大阪と、同(おんな)じや、こんなごんでは、見ねえてええ..」
 その蛙はまたピタンピタンて、大阪さ帰ってしまったど。
 京都の蛙もそれと同じに山の上まで行って、
「いやいや、こわいこわい(疲れた)、ここからでもええ..から、見っかな」
 て、また立ったど。そうすっど、京都見えてしまったど。
「いや、大阪も京都と同(おんな)じや、こんでは見ねえ方ええ..」
 て、またそこから京都の蛙も戻ってしまってあったど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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