38 擂粉木の音と座敷を掃く音の嫌いなじさまと小判のきらいなじさまの話

 むかしあったけど。
 あんまり仲のええ..ぐない、じさまたちいでやったど。そして、
「お前、まず一番、何嫌いだ」
 て、そう言うたど。そしたら、意地悪じさまは、
「おれは、朝げ擂粉木で味噌する音と、座敷掃く音が大嫌いだ」
 て、そう言うど、一人のじさまは、
「おれは、小判は大きらいだ」
 て、そういうたど。そうしたら、意地悪い方は次の朝げ早く起きて行って、朝 げの座敷掃く音嫌いだという家さ行った。座敷ザァザァ、ザァザァと掃いて、そ して擂鉢さ味噌入っで、ガェロガェロとすったど。そしたば、
「いや、恐っかない、恐っかない。嫌いだからはぁ、止めて呉ろ、止めて呉ろ」
 て、蒲団さもぐったど。じさ、ええ..気持で帰って来たど。そうしたら掃がっだ 方のじさまは、別な方のじさまのどさ、自分の金ぁ、有りったげ持って行って、 窓から、
「小判だ」
 て、投げ込んだど。
「恐っかないから投げねで呉(く)ろ」
 て。有りだけ投げて行ってやったど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
>>お杉お玉 目次へ