(2)かい餅

 むかしあったげど。
 お寺の和尚さんと小僧がいてあったど。和尚さんが、かい餅練(ね)りして食うども、 和尚さん、自分でばっかり食(く)って、小僧に食(た)べさせない。あるとき、和尚さんが、 御法事に招ばっで行った後に、小僧が一人で作って食べたど。あまり作り過ぎし て、食べ残したど。そんで、入口の雪の中さ鍋のまま埋めたど。そして忘れっど 思って、ギンギンと踏んで、その上さ糞たっでおいた。
 次の朝に見ると、雪降って見えなくなってしまった。小僧は道踏みに出て、
   雪降りて、しるしの糞も見えざれば、
    かい餅鍋は、いずくなるらん
て掘っていた。それを和尚さん聞きつけて、
「小僧、いま何て言うた」
「雪降りて、しるしの松も見えざれば、わが故里はいずくなるらん」
 て言った。
「よく出きた。そんでは、かい餅のことは許す」
 て、和尚さん言うた。
(川崎みさを)
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