32 姥捨

 むかしぁ、六十一才になっど、親を山さ置いて来たもんだど。息子が親を捨て に行ったわけだど。そうすっど、背(ふ)負(さ) っていた親が、木の枝をポキンポキンと折る。
「こんな真似して、帰ってくる気なんだか」
 て思って行ったって。
 ある山さ行ったら、降ろしたずうんだな。
「お前帰るとき、道に迷わねように、木の枝折ってきたから、迷わねで帰れよ」
 そう言わっで、とても親ば捨てらんねと、背負って帰ったど。
 むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
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