25 ネズミ浄土(1)

 むかしあったけど。
 じんつぁとばんちゃいで、じんつぁは山さ火野(かの)うないに行ったど。一生懸命で うなってはぁ、昼飯(ちゅうはん) 食って、木の根っこさ腰かけて、昼休みしったど。そしたば 根っこの下の孔からネズミ一匹チョロチョロと出はって来て、「ええ空だ」て、そ ういうど。そうすっど、中から大勢のネズミが、こんどゴザ引張り出したど。そ してこんど、地蔵さま持って来て立てたど。それからそのゴザひろげて、金いっ ぱい持ってきて干したど。ゾロリとそのゴザの上いっぱいに。
 そうすっど、じさま、そっと根っこから降りて、その金、弁当風呂敷さ包んで 家さ帰ってきたど。そうして、
「ばさ、ばさ、今日はこういうええ..ことあった」
 て見せっだど。そうすっど隣のばさま来て、
「なんと、おみたち(お前たち)、こらほどのお金、なじょしてもうけやった...」
「おらえのじさ、火野うないに行って、これこれで、ネズミの干したな、さらって....来たど」
 て、こう言うて教えたど。
「ほんでは、おらえのじさまもやんなね」
 て、家さ帰って行ってはぁ、じさまに教えたど。そうしてじさまもそこまで行っ たども、火野もうなわねで、根っこの上さ休んでいたど。そうすっどやっぱりお 天気なもんだから、ネズミまた出てきて、「ええ空だ」て言うど、またゾロゾロと 出てきて、地蔵さま持ってきたど。そのうちに、じさま、小便出てきたずも。降 りてたれればええ..ことに、木の上からジョウジョウとたれたど。そうすっど、
「地蔵さま、地蔵さま、雨降ってきた。教えておくやい」
 て、地蔵さまは、
「雨降って来た、雨降って来た」
 て、教えたわけだど。そうすっど、ネズミ出てきて、みんな金しまったど。そ んで、ただ帰って来たど。人の真似してもうけんべなんていうことするもんでな いど。むかしとーびん。
(川崎みさを)
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