24 食わず女房

 むかしあったけど。
 ある田舎に若い息子いだども、親も誰もなくてはぁ、たった一人で暮しったけ ど。そうしてこんど、一生懸命で稼いで働いて、働き抜いて、身上築くべと思っ て、働いて、たんと食べものも食べないで一生懸命で働いっだけど。そうしたば ある晩方、若い女来て、 「おれば今晩泊めて呉(く)んねぇか」
 て、そう言わっで、
「おれ、一人で何も御馳走も出ないし、泊めることはでない」
 て言うたども、
「御馳走など何もないてもええ..から泊めてだけ呉ろ」
 て言うたずも。そしてこんど、
「そんだら、あまりええ..から泊れ」
 て、そしてこんど、泊めたら、なんぼ飯炊いても、自分食(か) ないで、旦那にばり食せて、そして稼ぐなんていうことして、
「よく生きてるもんだか」
 て思って、旦那も不思議立てっだど。そしてあんまり不思議だから次の日、
「おれ、今日は遠(と)かい町まで行って来っから、峠もあることだし、昼飯握って呉(く) ろ」
 て、そして握り飯の大きなのもらって出て行って、脇さ出たふりして、この天 井さ上って隠れてて、そうして一人で留守居してたとこ見っだけど。大きな鍋さ 三升も五升も炊かれるような鍋さ、いっぱい御飯炊いだずも。そうして何するも んだかと見っだば、こんど握るわ握るわ、御飯出たば握り飯の十も二十も握って、 そしてこんどは、きれいに結ってだ髪解いだずも。そうしてこんど、
「次郎も食え、太郎も食え」
 て、みなその自分の頭の髪の中の大きな穴の口開いっだどさ入っでやっこんだ ど。ほうして....恐っかなくて、恐っかなくて、晩方、そろっと帰って来たば、また きれいな髪結ってたけど。そうしてこんど、ほれ、
「何だか米もたんと...(余計に)穫れないし、一人で暮すから、そがえにいつまで も泊めて置かんねがら…」
 て、そう言うたずも。そうしたら、
「そんなこと言うたって、おれは帰らんね。かがにもらってもらったもんだから どうでも置いて呉ろ」
 て言う。こんどはぁ、恐っかなくなって、恐っかなくなって逃げたずも。一生 懸命で…。逃げた逃げた、後振り返せば、追っかけで来っし、それからこんど仕 様ないから、隠れ場所ないか、ちょいと見たば、背の高いヨモギ生えっだけど。 その中さ隠っだずも。そうしたば、こんど。
「どこにいたべ」
 て、そこ、グルリグルグル廻っていっども、見つけないではぁ、戻って行った ずす、そうしてこんど、そこさ隠っだども、こんどいた模様もないし、見たば、 その日は五月節句だな、気付かねで、その、鬼除けに菖蒲とヨモギ、窓際から玄 関にさすの、ささないでて、鬼にねらわっだんであったんだど。
 んだから、毎年五月の節句には菖蒲とヨモギを忘(わす) んねで、部屋の入口から窓ささすもんだけど。その嫁は蛇だったど。
 むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
(笹巻いて、その笹っ葉、蛇さわっど、味噌変っどわるいから、味噌桶さ貼るの だど)

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