20 金の斧・銀の斧

 むかしあったけど。
 向うの山中のとこに、木伐りを専門にするじさまいでやったど。そしてこんど、 ある日、川端で大きな木伐っているうちに誤まって、斧(まさかり)を川の中に、ドブンと 落してしまったど。そして正直なええ..じさまであった。
「いたましいことした。あれなければ、仕事もできないし…」
 て、こう一人ごと言うていたけど。そうしたら川の中から年いった....おじいさん が出てきて、
「じさ、じさ、いま落した斧拾って来てくれるから」
 て、そう言うたど。そして金の斧をもって来たど。そして、
「お前の落したのは、これだか」
 て、こう言うたど。
「いや、そんな立派な斧でない」
 て、そう言うたど。
「ほんでは、また別なな.探して来るからな」
 て、入っていって、こんどは銀の斧持ってきたど。
「お前の落したのは、そんではこれだか」
「いやいや、そんな立派なもんでない。鉄で作った斧だ」
 て、こう言うたど。そしたらこんど、またもぐって行って、本当に落した斧拾っ て来て、呉(く)っだど。そしてそれと同時に、金の斧も持ってきて、
「お前は正直ものだから、これも呉れてやる」
 て、その斧もらって来たど。そしてそれを聞いて、欲の深いじいさんが、
「よし、おれも行って金の斧もらって来よう」
 て、こう思って行って、斧をわざと、ドボンと投げたど。そしたらまた同じよ うな白髪のじいさんが現わっで、
「ああ、お前の斧拾って来てやる」
 て、こう言うたど。そしてこんど拾って来たのが、金の斧、やっぱり持って来 て、これだか、て聞いたど。「ああ、それだか」「それだ」てそう言うたど。そし たら、
「この嘘つきはぁ、落した斧はそっちの方だ」
 て、わざと投げた斧の方与えらっで、金の斧はもらいぱぐってあったど。わる い心掛けでは、わるいもんだど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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