3 子育て幽霊

 むかしあったけど。
 あるところに若くて子ども生んだばっかりで死んだどッス、お嫁さんがな。そ んだども、こんどその旦那さんが子ども抱 かか えて、貰い乳して歩くようなあんばい であったど。
 死んでもその母親は子どものこと心配で、心配で、そして夜になっど、お墓か ら出てきて、―この辺で死んだとき、六文お金もらって行くのな、―その一文銭 もらって飴屋さ行くずだもの、毎晩げ。そして、
「飴、一文宛売ってくろ」
 て、そう言うて、一文宛の飴買ってきて、そして子どもの口さ、その飴放り込 んで帰り帰りしたど。そしてはぁ、六晩も続けたども、あと金がなくて買うよう できながったど。それ、こんど父親は、
「はぁて、六晩も大人しかったに、まず…」
 て思って、
「なんちゅうごんだべ、こんなことは…」
 て、そう思っていたど。そしたば、その飴屋に、
「こういう女が、おらえさ飴買いに来てあった」
 て聞かせらっで、ほんで、
「死んでもこの子ば心配して、出てきたなであった」
 て、よくよく大事に育てらんなねて、親父ぁ本気になって子ども育ててあった ど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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