27 曽呂利新左ヱ門

 曽呂利新左ヱ門が太閤と碁打ちした。
「殿下、わたしに碁敗けたら、紙袋いっぱいの米下さい」
「よかろう、毎日毎日、お前に唯ばり負けていっから、今日はもし負けたら、紙袋にいっぱいの米は、それぐらいのものは、おれも持っていたから上げんべ」
 と。そして碁打ったどころが、太閤碁て言うて、真似碁で打ったど。そして曽呂利新左ヱ門が負かしたわけだど。
「紙袋持って参り申すから、一廻りの御猶予を願いたい」
「ああ、よかろう」
 軽い気持で…。で、その間に曽呂利新左ヱ門は三十三倉入るだけの大紙袋を作って、倉にかけて、
「殿下、あの袋で一杯の米いただき申したから…」
 秀吉は仕方なしに、その倉に入っていた米呉っだど。という話。
 それから、また、
「碁打ちして負かしたら、この城にある障子一枚、いっぱいの一文銭を下さい。ただし、それは一番始めに一文銭一枚、二枚目に一文銭二枚、三枚目には四枚、四枚目には八枚というふうに計算して行って、これにいっぱい下さい」
「馬鹿に小っちゃこいこと語るな、天と地をまるめて飲んで、なんていう歌うたう大ボラ吹きのお前が、そんなでたくさんなのか、いや、よかろう」
 んで、やって、また曽呂利新左ヱ門に負けて、そしてそのお納戸方に、それを計算させたところが、とてもじゃないが、払えながったんで、秀吉は曽呂利新左ヱ門に降参したど。むかしどーびん。
(塚原名右ヱ門)
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