24 むかしむかし

 むかしあったけど。
 ある旦那さまのおばあさんいだども、おれみたいに足わるいか何だかして、どさも行けないで、
「むかし、たくさん聞きたいな」
 て、毎日言ってだけど。そしたば、ある賢い息子、それ聞きつけて、
「お代官さまから触れもあったし、おれ、たくさんだて言うまで、語って聞かせて来っか」
 なて、出かけて行ったど。そしてこんど、
「さぁ、始めっぞ、ええか、ばばちゃ」
 て言うたば、
「ええから、ええから、早く語って聞かせて呉(け)ろ」
 して、
「むかしあったけど」
 て言うど、
「はい」
 て言うずも。また「むかしあったけど」て言うど、「はい」て言うど、「むかしあったけど」て言うど、「はい」て言う。一日そう言うて暮らしたど。そうしたらば、そのおばあさん、はぁ、
「あの、おれ、触れ廻したなに、たくさん聞かせて呉れっど、馬八匹御褒美にやると、そう言うたどな。一日聞かせてもらってはぁ、たくさん聞いたから、約束通り馬八匹呉っでやっから」
 て、年寄りあてた馬、こわれた鉢つないで八疋の馬に八つ鉢ひかせて、そしてそれもらって帰って来たけど。むかしどーびん。
(高橋しのぶ)
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