22 おっかなくて、おかしくて、むごさい話

 ほがえに、ほがえに、お前がた昔話聞きたい、聞きたいて言うんなら、今夜はあの、おっかなくてな、うんとおっかなくて、そしておかしくて、むごさい話して聞かせっべがな。
 むかしあったけど。あるところに大きな鬼いだけずも。顔が真赤で、背が七尺もあって、角が二本生えておって、大きな鬼いだっけどィ。そうしてな、見っど誰でも、ほら、鬼はおっかないべぁ、なぁ、恐(お)っかないべぁ。
 その鬼がな、屁プゥーッとこいだずも。なぁ、屁ブゥーッとこいだんだぞ、おもしゃいべ。お前、な、おもしゃいべぁ。ほしてな、屁こいだどきにあんまり大きな屁こいだもんだから、ゴロッと死んでしまったどャィ。なぁ、むごさいごとしたべぁ。なぁ、むごさいがったごど。そんな大きな鬼、屁こいだだけで死んでしまったどャレ。むかしどーびん。
(塚原名右ヱ門)
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