17 篩借り

 あるところに、じんつぁとばんつぁいだけど。 して、春になったけれども、種子蒔きしましょうと思ったが、豆の種子を持たぬ。 それで神さまに行って、一生懸命にお授けを願ったど。 ところが種子が一つ手に入った。それでその種子を持って帰って、半分は黄粉、半分は種子にしようということで、二つに分けて、半分をカラカラ、カラカラと煎って、臼に入れて、カンコン、カンコンとはたいた。 篩でふるおうと思ったげんども、篩うものぁない。 貧乏なもんだから、篩うものはない。 それで、じさまの褌の端をのべて、それで篩の代りにしてふるった。
 そしてるうちに、じさまが間違って、屁ブーッとたれてしまったところが、その黄粉が全部、もやもや、もやもやと川向うの山に行って、木の葉さ喰付いてしまった。 んで、村中の子どもらが集まって、指さペターッとつけては、ペロッとなめ、ペターッとつけては、ペローッとなめ、ペターッとつけてはペローッと…。
(塚原名右ヱ門)
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