2 おさん・お梅・お吉狐

 むかしあったけど。
 下叶水と胡桃平の間に、三匹の狐がいて、賽の神のはおさん、廻 (まわ) 戸 (と) のはお梅、下大石沢の胡桃平の間のブナ畑のはお吉狐であったど。
 胡桃平の次郎右ヱ門の親父と息子が、盆にもなるから、小国さ買物に行って、隣のも頼まっで油揚げやローソクなど沢山買って、一人では夕方になっど狐どもにいたずらされっど困るというので、賽の神の橋のとこまで来たら、
「二人でなんぼか、おどっつぁと兄 (あ) んつぁが疲れたべから、娘迎えに来たから、ちいと分けて背負うから…」
 て、背負ったど。分けて背負ってもらって行って、こんどまた廻戸さ行ったらまた迎え来たずもの。その下の妹だ二人で来たど。
「おっかも、姉も出はって、おらだばりで待ちでる。長くなったから、おれも迎えにきたから、半分、おれ背負うから、おどっつぁと兄 (あ) んつぁはちいと背負って歩 (あ) えべ、疲れたべから…」
 て、また妹たち二人が廻戸でまた分けて背負って呉っだど。それからこんど行ったば、隣の娘っこと、おっかさ、
「おらえの分も頼んでやったな、重かったべに、あまり遅くなったな、おらも迎えに来たから、みんな背負うから、楽にして帰るように…」
 て、すっかり背負って呉っだど。ぶな畑、大石沢の胡桃平の間の峠で、そして皆背負ってもらって家さ帰って来たずも。そして胡桃平の家さ帰って来たずも。そして、胡桃平の家さ帰って来たらば、
「今きたか、まず湯沸かしたから湯さ入れ」
 なて、湯さ入って、裸になって、湯さ入って、ええ気持で湯さ入っていたらば、こんど誰か草刈りだか何だかに来てはぁ、夜明けてお日さま出たなであったど。草刈りできた若衆、
「なんだ、昨日 (きんな) 、盆買いものに行って来たって言うけぁ、そんなどこにいて…」
 なて、
「おれぁ、湯沸かしてもらって、ええあんばいで上がらんねがら、いつまでも入っていっかと思って、ゆっくり入ってだ」
 て言わっで、
「なんだ、そこ、川だぞ、ほらブナ畑の川だ」
 て言わっで、それで気付いてみたらば、その先にはおさん狐、賽の神で、それからお梅狐、廻戸で、こんど一番後にブナ畑のお吉狐に、みんな荷物盗 (と) らっで、ブナ畑の川さ入っていたなだけど。むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
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