45 竹やぶの狐

 梓山の高寺のわきの竹やぶあったど。そこの竹やぶには狐がいて、人をおどかすよなことをすんだど、と言われていたもんだから、そこを通るのが恐っかなかったもんで、あんまり通んねがったど。少しでも笹が動くと、狐が出てきったんだと思っていたど。いつもいつもビクビクしていたど。ほだげんども、本当に狐がいるかどうか、自分の目で確かめてみだくて、「おれが退治してやる」と言って度胸据えていってみたど。ほだげんども、狐なんてうそっぱちで、何も出てこながったんだど。
 人間というのは、いつもそういわれでっからって、びくびくしていだんでは駄目だど。心を決めて、度胸すえて、ほんとに確かめる気持ちがないと駄目だな。
話者 我彦みつぎ (米沢市三沢)
採集 我彦優子
>>置賜のむかし 目次へ