39 長い名の子

 あるどこさ夫婦がいだっけど。そいつださ、子ども二人いだったんだけど。すぐ死んだど。「何でだべ」と思っていたら、和尚さまが、「おまえんどこのは、名前短かいから命も短かいなだ。今度子ども出きたら、長い名前付けて呉っから」と言ったど。そのうち子ども出きたど。んだもんだから、和尚さまのどこさ行ったら、
「いっちょきっちょ、にきっちょ、さんげのべっとう、すっとっと、きょうやれかいぽ、たなちり、どんべんくぐりの股二郎」
 と名付けたど。そして子どもが、ちっと大きくなって騒ぐようになったら、その子ども、井戸さ落ちたど。魂消たおっかさは、
「おら家の、いっちょきっちょ、にきっちょ、さんげのべっとう、すっとっと、きょうやれかいぽ、たなちり、どんべんくぐりの股二郎、井戸さ落ちたから、ハシゴ貸しておこやえ」と言いながら、隣の家さ走って行ったけど。そしたらその家さは、ハシゴないがったもんで、別の家さ行って、また「おら家の、いっちょきっち…」
 そがなことしているうちに子どもは溺れ死んだけど。んだからあまり長い名前もええもんでねぇど。
話者 浜田のり (川西町上小松)
採集 村田友子
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