35 法印と狐

 狐が栗の木の下で寝ったったど。それを見た男が、「こんちくしょう、昼間から寝てやがって」て言って、構(かま)って(いたずら)呉(け)っかと思って、ホラの貝で狐の耳さ、ボォー、ボォーて吹いてやったど。そしたばきつねはびっくりして、飛び上がって、犬川さドボンて落ちたど。そして、あぱとぱて川の上の方さ行ったど。そして狐は、「ようし、いつかきっと仕返ししてやっから」て行ったど。そしたば、その男の立ってっどこの向こうから、人の行列が来たんだど。それは葬式だったど。そして男の丁度そばさ穴掘りを始めたど。そして埋めて、
「惜しい人、亡くしたごど」て、みな言って、また帰ってったど。そしたば土の上で動き出して、今埋めた死人が出てきたんだど。そして男の足さ、すがりついて来たど。んだもんで男は逃げたど。そんでもくっついで来て、さっきの栗の木さ男は登ったど。まさか死人が木を登んねど思ってよ。
 そしたばやっぱり登ってくんなぁど。んだもんで男は、「助けろー、助けろー」て叫んだど。「死人がくっついで来る」て言ったど。そしたば、「何言ってる、狐だでそ」て、下さいだ男の人が言ったど。狐が化かしたんだったど。
話者 佐藤トメノ (川西町)
採集 斎藤操子
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