31 おんぶお化け

 嫁もらったばっかりだげんど、臆病たがりの男がいだったど。夜はひとりで便所さも行かんねくて、誰かさ、「行って助(す)けろ」て言うげんど、誰も行って呉ねもんで、嫁に頼んだど。んだもんで、それから毎日、嫁がついて行って呉っちゃど。んだげんども、嫁も始めは我慢しったったげんど、嫌(や)んだくなって、おじさんのどこさ、
「おれ、あの家さ、とってもいらんにぇ」て言って来たど。おじさんは、
「もうちっと我慢してみろ、そがな臆病たがり、おれが治して呉れっから」て言って、ある夜、便所の上さ上がって、赤い南瓜持って、その男が来んなを待ってだったど。そして男は来たど。そこさその赤い南瓜を男の顔さ落したんだど。男は、「わぁ、化けもの出ねていうげんど、やっぱり出たでねぇが」て、わめいたど。そしたば、嫁は、
「よっく見ろ、ただの南瓜だったんが、お化けつうのは、みな南瓜のことだな」
て思い込んでしまったど。
 その村の寺あったど。んだげんども夜になっど金ピカの化けものが「おぶれ、おぶれ」て出て来るもんで、五人組の人が毎日泊りにいがなねがったど。んだげんでも、みな恐っかないがって、化けものが出で来っどみな逃げて来っかったど。それを聞いた男は、「そがなもの、おれが退治してくれる」て言って、夜、寺さ行ったど。そしたばその化けものが出てきたど。そして、「おぶれ、おぶれ」て言うもんで、「そがに言うごんだら、おぶって呉(け)る」て言って、背中さおぶったど。そしたばかなり重(おも)でぇがったど。
「随分、重でぇ南瓜だごど」て、家さ帰ったど。五人組の人さ、
「お化けはおれが背中さおぶったがら、後出ねぞ」て言ったば、みんなは喜んで、その家さ酒だの、何だかんだと、いっぱいお礼だって言って持ってきたど。そして、その金ピカの化けものて言うなは、金のカタマリだったど。それは寺のお金で、お賽銭とか、みんなから集まったりした寄付金が、長い間使われねでしまってだったもので、とけて、金のかたまりになったったど。んだもんで、その家はかなりの金持ちになったど。
話者 佐藤 (川西町)
採集 斎藤操子
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