29 おせんの話

 おせんと親父がいたんだど。そして親父はいつもバクチ打ちさ行くんだど。んだもんだから、おせんは夜になっど、
「たんころわい たんころわい
と、山から化けものが落ちて来っから、今日は行かねでいろ」
 て、親父さ頼んだんだど。親父はおせんさ、
「そがに恐っかねがったら、金ビツさ隠っちぇろ」と言って、バクチさ出て行ってしまったんだど。すっど、やっぱし夜になって、
「たんころわい、たんころわい」と言って化けものが落ちて来たんだど。そしておせんの家さ入って来たんだど。誰もいねがら出て行んかと思ったんだげんど、クシが落ったんだど。そしたら、化けものがクシさ、
「おせん、どさ行った」と聞いだんだど。最初、クシは、「知しゃね」と言ったんだど。そしたら、化けものが、
「知しゃねなんて言うど、折っぞ」と言ったんだど。するとこんどクシは、
「おせんはに…」て言ったんだど。すると化けものは、
「おせんはにって何だい」と言ったんだど。クシは、「おせんはにかい」と言ったんだど。するとこんど「二階のどこだ」って聞くと、クシは、「金ビ…」まで言ったんだど。するとクシはとうとう「金ビツ」と言ってしまったんだど。そうしたら化けものは二階さ行って金ビツの蓋開けてみたら、おせんは縮こまって入っていだんだど。化けものはおせんを引き出して食ってしまったんだど。親父が遅くなって帰ってきて、「おせん、おせん」て呼んだげんども、返事なかったど。そしたら二階から血タラタラとたれて来たんだど。二階さ行って、金ビツ開けてみたら、おせんのあちこち残っていたんだど。そいつ見て、親父は、
「おせん、悪がった、あがに頼まれたのに、おれ行ってしまって」て泣いたど。
話者 遠藤 (米沢市松が岬)
採集 斎藤恵子
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