24 お糸唐糸

 むかし、先妻の子のお糸という女(おなご)がいだったど。そこさ新しいおっかが来て、その子どもが唐糸という女だったんだど。
 そのおっかは、お糸どこを働がせてばっかりいだったんだど。そして意地悪ばっかりして、めんごがんねがったど。そして唐糸ばっかりめんごがったんだど。んだげんど、唐糸は心やさしい女だったど。
 そのおっかと唐糸が映画見さ行ったど。そしてお糸には、米をといで御飯炊いで用意しておけと言って、出かけだんだど。そこさお糸の友だちが来て、「映画見さ行くべ」て言ったんだど。んだげんでも、お糸は、
「おれは、しんなねこといっぱいあるし、着物だて持ってね」て言ったんだど。そしたらその友だちみんなが、お糸の仕事の米つきだの、米とぎだの、米炊いだりして手伝って呉(け)っちゃんだど。んだげんどお糸は着ていぐ着物ねえもんで、本当のおっかの墓さ行ったんだど。そこには松の木が一本あって、そこで、
「キンランドンスの着物とクツが欲しい」て、三回唱えだらば、そこの松の木伝わって、着物の履物が天から落ちて来たんだど。それ着て映画さ出かけて行ったんだど。そして映画館では上の方に席をとってまま母と唐糸がいだったど。そしてお糸どこを見て、「ずい分お糸と似っだごど」と思ったげんど、全然気付かねがったんだど。お糸は唐糸たちより前に急いで帰ったんだど。そん時、身分の高い人がお糸どこ見て、とっても気に入って、是非嫁にしたいて思ったんだど。お糸は帰っどきあんまり急いだもんで、履物を片方落してしまったんだど。その履物をその身分の高い人が拾って、それを履く娘を探しだしたんだど。とうとうお糸の家さ来たど。おっかは唐糸さ履かせたげんど、その靴が小(ち)っちゃくてどうしても入んねもんで、おっかは唐糸の足の指を一本切ってまで、履かせようとしたげんど、やっぱり分んねがったど。そして仕方なくお糸さ履かせたきぁ、ぴったり合ったんだど。んだもんでその身分の高い人は嫁にすっことにしたんだど。そして御祝儀の時、行かねばいいことに、そのおっかと足を血だらけにした唐糸は見に行ったんだど。そしたば、お糸が着った立派な衣裳の模様の左肩の方の鳥がとんで行って、おっかの目を口ぱしでつっついたんだど。そして右肩の方の鳥は唐糸の足の指をくっつけで呉(け)っちゃんだど。
話者 佐藤(川西町)
採集 斎藤操子
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