20 猿聟入

 むかしむかし、山の中におじいさんが住んでいたっけど。おじいさんには三人の娘がいたっけど。おじいさんが山さ行って薪をとってるうちに、足をすべらして谷川に落ちそうになったど。そしたらそこさ、猿がやって来て、おじいさんを助けて呉っちゃんだど。お礼しっからと言って、三人の娘のうち一人を嫁さやっからといったど。そしたら猿は喜んで、次の日、さっそくやって来たなだど。おじいさんは娘たちに、その話をしたら、一番目の娘も二番目の娘も嫌(や)んだってことわったんだど。ほだもんだから、おじいさんは猿にあうのがいやで、寝っだ振りしったど。そしたら三番目の娘が、おれが行って呉っからと言ったど。そして、猿のお嫁さんになったんだど。
 嫁さ行って、初めての節句がやって来たなだど。おじいさんに餅持って行がんなねといって、二人で餅搗きしたなだど。猿は重箱を出して来て、これさもって行くべといったげんども、嫁はおじいさんは重箱の匂いが嫌いだからといったら、ほじゃらばといって、鉢を出してきたなだど。ほだげんども、嫁はおじいさんは鉢は鉢くさいの嫌いだそ、といったんだど。嫁は餅は入っちゃまんま、臼ごと背負って行ったらいいんでねえがと言ったど。猿は喜んで、ほだほだと言って、背負って行ったど。二人で川端を歩いっだら、山の上さきれいな花が咲いていたっけど。嫁は猿にとってけろと言ったら、猿は喜んで取ってけるといって、臼を降ろそうとしたど。嫁は下に降ろすと、臼さ土がつっから、そのまま背負って取ってけろといったど。猿は言われたまま、臼を背負って登っていったど。猿はこれか、これかと聞くけれども、嫁は、ほんね、もっと上、もっと上と言って、とうとうてっぺんまで登って行ったど。そしたらその木がおれて、猿は臼がらみ谷底に落ちて行ったど。そして嫁はさっさと走って家に帰って行ったど。
話者 勝見花子(川西町犬川)
採集 田村美代子
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