18 猫と南瓜

 むかし、猫が好きで好きでたまらないじじがいたったんだど。そこではブチ猫で「ブッコ」という名前の猫を飼っていたんだど。
 ある日、じじが囲炉裡ばたで背中をあぶっていると、うしろでことっことっという音がしたんだど。振り返ってみると、ブッコが戸棚の戸あけて盗(ぬす)食(く)らいをしていたんだど。んだもんだから、じじが「ブッコ、お前、盗食らいしたなが」て言ったんただど。そしたら、ブッコは何を思ったか、じじの背中を思い切りかっちゃいで逃げて行ったんだど。じじはあがに可愛がっていたのに、なんでこがなことすんなだべと言って、すごく怒ったんだど。
 そしてブッコを殺して土堤に捨ててしまったんだど。
 春になって、種子も埋めない土堤から南瓜が出てきたんだど。村の者は不思議がって、そこを掘ってみたんだど。そしたら南瓜の芽はブッコの目から出ていたんだど。それでブッコを神おろしにかけてみたんだど。ブッコの言うには、
「じじは、おれが戸棚を開けて盗食らいをしていたのを怒ったので、じじの背中をかっちゃいたら、おれを殺したので、南瓜に化けて、じじに食べさせ殺そうと思ったんだ」と言ったんだど。
 だから猫はいくらかわいがっても魔物だというんだど。
話者 佐々木(米沢市峠)
採集 高野美喜子
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