16　地蔵浄土

　むかしむかしよ、おばぁさん掃除しったらば、お供えしった団子がコロコロって、転がって行ぐんだじも。おばぁさん、団子追っかけで、
だんごどの　だんごどの
どこまでごさる
て聞いたど。そしたらば、団子、
大坂、境の、地蔵の前まで
　て、二・三回言って、ねずみの穴さ入っていったじも。おばぁさんも一緒になって入って行ってみたらば、お地蔵さまの前さ転がって行ったじも。
「お地蔵さま、お地蔵さま、団子転がって来ねがったべか」て聞いだらばお地蔵さま、
「おれ、腹へったもんだから、御馳走なったぜは」て言ったじも。
「んじゃ、ええげんどもよ」て、おばぁさん言ったげんどもよ、お地蔵さま、
「おれ、食った。お礼に今日の晩、おれの前で鬼いっぱい来て、札勘定するから、おれの後さ隠っで、〈コケコエロ！〉て、三回鳴いでみろ」て教えだじも。
　お地蔵さまのかげさ隠っでだらば、鬼いっぱい来て、札勘定すんなだじも。おばぁさん教えらっちゃ通り、「コケコエロ！」て一回鳴いだじも。そしたらば鬼、
「一番鶏鳴いたから、早く勘定すっぺ」て言ったど。そしておばぁさんまた鳴いたど。
「これこれ、二番鶏鳴いだから、早くすっぺ」て言うたど。おばぁさん、また鳴いたど。そしたらば、鬼明るくなんなだど思って、札担いでわらわら逃げでったど。そしてお地蔵さま全部その札、おばぁさんさ呉っちゃど。ほだからお地蔵さまじゃ大切にしんなねもんだど。とーびんと、さんすけ眼に毛が生えで、けっけっ毛抜きで抜いたれば、めんめんめっこになりました。
話者　井上ムツ子（川西町中小松）
採集　飯沢紀子
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