14 三枚のお札

 むかしむかし、あるどこさ和尚さまと小僧いだっけど。
 天気があんまりええもんで、小僧は和尚さまさ、
「山さ花摘みに行がせて呉ろ」と頼んだど。んだげんども和尚さまは、
「そがに遠くさ一人でやらんにぇ」と言ったけど。んだげんども小僧は、
「こがに天気ええもの、ええごで」と、一生けんめい頼んだもんだから、和尚さまは、
「んじゃ仕方ないごで。んだげんども何かあっか分んねがら、このお札三枚やっから、危なくなったら『大川出ろ』と言って、この札投げろ。すっど大川出っから。この札は『火の山出ろ』と言って投げっど火の山出っから、そしてこの札は『針の山出ろ』と言って投げっど針の山出っから、このお札持って行(ん)げ」と言ってあずけたど。
 小僧は喜んで山さ花摘みに行ったど。山さ行ったら、いっぱい花あったもんで時間経(た)つな忘っで花摘みしったったど。そしたら後の方から、
「小僧待てぇ、小僧待てぇ」と、鬼婆が追っかけてきたっけど。魂消た小僧は持(たが)ってだ花投げて逃げだど。一生けんめい逃げだけど。鬼婆は走んな早くてつかまりそうになったけど。んだもんだから、和尚さまに言わっじゃこと思い出して、「大川でろ」と言ってお札投げだど。そしたら小僧の後さ大きい川出だっけど。んだげんど、鬼婆はその川の水全部のんでまた追っかけて来たど。小僧は一生けんめい逃げたげんども鬼婆早くて、またつかまりそうになったけど。んだもんだから小僧はこんどは、「火の山出ろ」と言ってお札投げだど。火の山出たど。そしたらさっき飲んだ水で火を消し消し鬼婆は山登ってきたっけど。そしてまた小僧つかまりそうになったもんだから、「針の山出ろ」と言って最後のお札投げたらば、針の山出だっけど。鬼婆はあっちこっちから血出しだし登ってきたっけど。その間にやっと小僧はお寺さ帰ったど。鬼婆はお寺の中までは入ってこらにぇもんだからあきらめて帰ったど。和尚さまは、「んだから遠(とか)いどこさ、一人で行ったりさんにぇもんだ」と言ったけど。
話者 浜田のり(川西町上小松)
採集 村田友子
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